魅惑のトロロン・モンド垂直試飲
サンテミリオンの名門シャトーが開催する特別な垂直試飲会へ
フランス・ボルドー地方の世界的な銘醸地、サンテミリオン。
数々の名門シャトーがひしめくこの地で、近年ひときわ高い評価を受けているのが、サンテミリオン格付け第1特別級Bの「シャトー・トロロン・モンド」です。
今回、当店ソムリエが幸運にも、この名門シャトーが開催する特別な垂直試飲会に参加する機会に恵まれました。
「垂直試飲」とは、同じ銘柄の異なるヴィンテージ(収穫年)を飲み比べるテイスティングのこと。
その年の気候による違いはもちろん、ブドウ栽培や醸造方針の変化、熟成による味わいの進化などを、実際にグラスの中で確かめることができます。
今回は、シャトーを率いるエメリック・ド・ジロンド氏自らが、ワイン造りの哲学や各ヴィンテージの特徴を解説。
名門シャトーの奥深い魅力に迫る、貴重な試飲会の様子をお届けします!
シャトー・トロロン・モンドの魅力を生む、サンテミリオンのテロワール
試飲会は、シャトーのCEOを務めるエメリック・ド・ジロンド氏による紹介から幕を開けました。
シャトー・トロロン・モンドは、サンテミリオンでも標高の高い丘の上に位置し、約27ヘクタールのブドウ畑を所有しています。
同じ畑の中でも、斜面の向きや標高、土壌の違いによってブドウの育ち方は異なり、それぞれの個性がワインの味わいに反映されるのだとか。
中でも感銘を受けたのが、今でも畑の作業に馬の力を活用しているというお話。
伝統的な方法を大切にしながら、土地の個性を最大限に引き出そうとする姿勢に、シャトーのこだわりが感じられます。
また、敷地内にはレストランやホテルも併設され、ワイン愛好家を温かく迎える環境が整っています。
かわいらしい看板犬も訪問者を出迎えてくれるそうで、名門シャトーの格式あるイメージとはまた違った、親しみやすい一面も垣間見えました。
ヴィンテージの個性を尊重する、エメリック氏のワイン造りの哲学
エメリック氏がワイン造りにおいて、特に重視しているのが「ブレンド」です。
目指すのは、フレッシュさ、果実の純粋さ、そして複雑さが美しく調和したワイン。
人為的に味わいを造り込むのではなく、ブドウが本来持つ自然な個性を活かすことを大切にしています。
中でも印象的だったのが、ヴィンテージに対する考え方。
「特定の偉大なヴィンテージに近づけようとはしない。その年ならではの特徴を尊重し、持ち味を最大限に引き出す」
毎年異なる気候条件を受け入れ、自然が生み出す個性をワインに表現する。
その哲学が、実際の味わいにどのような違いをもたらすのでしょうか。
いよいよ、お待ちかねの垂直試飲が始まります。
2011年から2020年まで!垂直試飲で感じるワインの進化
今回のテイスティングでは、モンドー2021年からスタートし、シャトー・トロロン・モンドの2011年、2014年、2015年、2017年、2018年、2019年、2020年を順に試飲しました。
同じシャトーのワインでありながら、ヴィンテージごとに香りや果実味、タンニンの質感、酸のバランスが異なります。
熟成によって落ち着いた表情を見せるワインもあれば、若々しい果実の力強さが印象的なワインも。
その違いをひとつひとつ確かめていくと、まるでシャトーの歴史をグラスの中でたどっているような感覚になります。
中でも、特に印象に残ったのが2017年ヴィンテージでした。
2017年は変革の年!新たなスタイルを象徴する1本
2017年は、エメリック氏が手掛けた最初のヴィンテージ。
シャトー・トロロン・モンドにとって、新たなワイン造りへの転換点となった記念すべき年です。
実際にグラスを傾けてみると、それ以前のヴィンテージとの違いは明らかでした。
ピュアでフレッシュな果実味に、控えめでしなやかなタンニン。そして、全体を美しく引き締める爽やかな酸。
それぞれの要素が絶妙なバランスで調和し、自然体でありながら洗練された味わいを生み出しています。
造り手の哲学が変わることで、同じ畑から生まれるワインがこれほど異なる表情を見せるとは!
垂直試飲だからこそ実感できる、非常に興味深い体験でした。
高評価を獲得した2022年!過酷な気候が生んだ凝縮感
エメリック氏が個人的にお気に入りのヴィンテージとして挙げていたのが、2022年です。
この年のボルドーは、記録的な高温と乾燥に見舞われました。
エメリック氏によると、4月から10月にかけてほとんど雨が降らず、ブドウの果実も葉も例年より小ぶりに育ったのだとか。
厳しい自然条件でしたが、その結果、ブドウには驚くほどの凝縮感が生まれました。
ワインからは深みのあるアロマが広がり、スパイスやマッシュルームを思わせる複雑なニュアンスも。
しっかりとしたタンニンとミネラル感が味わいを引き締め、力強さと緻密さを兼ね備えた仕上がりです。
このヴィンテージはワイン評価誌でも100点満点を獲得するなど、非常に高い評価を受けています。
気候の厳しさを乗り越え、土地のポテンシャルを見事に表現した、シャトー・トロロン・モンドの実力を物語る1本といえるでしょう。
1995年のマグナムボトルがサプライズ登場!
そして試飲会の終盤、思いがけないサプライズが待っていました。
なんと、シャトー・トロロン・モンド1995年のマグナムボトルが登場したのです!
通常のボトルの2倍、1.5リットルの容量を持つマグナムボトルは、長期熟成にも適しているとされ、古いヴィンテージでは特に貴重な存在です。
約30年の時を経た名門シャトーの味わいに、期待も一気に高まります。
ところが、残念なことに、このボトルはブショネ(コルク由来の異臭がワインに移る品質不良)と判明。せっかくの貴重なワインを味わうことは叶いませんでした。
これほどの名門シャトーが大切に熟成させてきた1本にも、こんなことがあるとは……!
どれほど素晴らしいワインでも、実際にコルクを抜いてみるまで、その出会いがどのようなものになるかは分かりません。
少し残念な結末ではありましたが、そんな予測できない一期一会もまた、ワインの奥深さであり、魅力のひとつなのだと改めて一緒に参加したメンバーの皆さんとも噛みしめた、思い出深いでき事となりました。
垂直試飲で再発見した、シャトー・トロロン・モンドの真価
今回の垂直試飲会を通じて、改めて実感したのは、ワインが持つ奥深い魅力です。
同じ土地、同じシャトーから生まれるワインでも、ヴィンテージによってその表情は大きく異なります。
そこには、毎年変化する自然環境だけでなく、ブドウと向き合う造り手の考え方や情熱が、確かに息づいていました。
「ワインとは、土地と人の想いが織りなす芸術なのだ」
エメリック氏の言葉に耳を傾けながら、異なるヴィンテージを飲み比べることで、その意味を改めて実感できたように思います。
ワインの背景にある物語を知ることで、グラスの中の味わいはさらに豊かなものになります。
今回の貴重な経験を活かし、当店でもシャトー・トロロン・モンドをはじめ、ボルドーの名門シャトーが持つ魅力を、これからも皆様にお伝えしていきたいと思います。