1級シャトーをも凌ぐ歴史を誇る造り手
1852年創業の老舗シャトー、シャトー・ラフィット・ロージャック。格付シャトーがひしめくメドック地区にあって、その長い歴史は周囲にひしめく一級シャトーをも凌ぐ、伝統と格式ある造り手です。
広大な敷地を持つ由緒あるシャトーは、地元で知らない人はいないほど。今回は、そんな有名シャトーを当店スタッフが訪問してまいりましたので、その様子をご紹介させていただきます。
その礎を築いたヘルマン・クルーズ氏はデンマークの出身。1847年にボルドー・グラン・クリュの特別なヴィンテージをほぼすべて買い占めるという大胆な投機に出て、1855年のパリ万博に合わせてナポレオン3世が制定したメドック格付けが発表されると一躍財を成しました。
ポンテ・カネやジスクールも手に入れ、シャトー・ロジャックの畑は140ヘクタールに拡大。この時代に建築された美しいメドック様式の醸造所、牛の飼育小屋、労働者用住宅、美しい庭園は今も大切に残されており、フランスの「歴史的建造物目録」にも登録されているのだそうです。
動植物でにぎわう豊かな環境で育つワイン
シャトーに到着後、歴史を感じさせる大きな門をくぐると、まず大きな牛舎に驚かされました。
フィロキセラや2度の世界大戦の影響で、一時はブドウ畑を8ヘクタールまで縮小したものの、1957年から現オーナーであるクルーズ家の傘下に入るとシャトーは見事に再建を果たし、現在ではじつに400ヘクタールもの敷地に拡大しています。
その内ブドウ畑は85ヘクタール。豊かな森林や、400頭もの牛が草をはむ美しい草原に囲まれた緑豊かな環境で、最高のワイン造りを目指しています。
オーナーご夫妻との対面
豪奢なシャトーのゲストルームにご案内いただくと、そこはまるで宮殿のような煌びやかさ。
シャトーの長い歴史を語るヴィンテージ家具や、創設者やナポレオン3世時代の重要人物の油絵が壁を彩る中、このシャトーの歴史を大切に繋いできた、ご家族の写真もそこかしこに散りばめられています。

私達を温かく迎えてくださったのは、前オーナーの娘でシャトーの血筋を受け継ぐヴァネッサさんと、夫で現当主を務めるルネ=フィリップ・デュボスク氏。
美術館の一角にいるかのような錯覚を覚えるほど美しいダイニングルームで、シャトーご自慢のワインと共にランチをご馳走になりました。
今年は日本で大阪万博が開催されましたが、実は私達のワインは、120年前、1903年に同じ大阪で開催された万博に出品されていました。そのときに賜った菊花紋章入りの感謝状は、今でも私達のテイスティングルームに大切に飾られています。日本との取引はそれ以降、長らく途絶えていましたが、この記念の年にまた日本のワイン愛好家の皆様に私達のワインを味わっていただけることになるなんて、大変感激しています
日本とこのシャトーにそのような特別なご縁があったとは、シャトーを訪れたスタッフ達にとっても驚きでした!
待望のテイスティング

その頃から大切に守り続けている伝統のワインを、早速グラスに注いでいただくと、熟したカシス、ブラックベリーなど凝縮した黒系果実に、リコリス、カカオ、タバコ、コショウ、杉、クローヴなどの熟成香に、複雑なスパイスのアロマがふわりと香り立ちます。
口に含むと、きめ細やかながらも存在感のあるタンニン、エレガントな酸味が全体によく溶け込み、しっかりとした骨格と、美しく伸びる余韻の芳香にうっとり。非常に上品なスタイルで、メインにいただいたローストビーフのフォアグラ添えとも素晴らしいマリアージュを奏でてくれました。
長い歴史を未来につなぐ
温暖化など環境の変化に合わせて適切な対応を取るようにはしていますが、基本のスタイルは長年変わっていません。私達のワインを毎年心待ちにしてくれている古くからのお客様も多いですから、今後も伝統の味わいにできる限り忠実に造っていきたいと考えています
長期熟成にも耐えうる古典的なメドック・スタイルのワインに、長年信頼を寄せているファンの方も多いことでしょう。最後にシャトーの今後について伺うと、2人のお子さん達がフランス北部の都市リールとイタリアのミラノに留学中との事。長男は卒業後に家業に加わる予定ということで、また新しい世代による新しい歴史が紡がれる日もそう遠くなさそうです。
1903年の大阪、そして2025年に再び日本へ。時代を超えて再びこの地に帰ってきた一本を、是非この機会に味わっていただけたらと思います。