学生の頃のインターンシップで、イギリスの5ツ星ホテルSummer Lodgeにて、マスター・ソムリエのエリック・ズィーベル氏に出会ったことで、本格的にワインの世界にのめり込みました。彼は2004年に英国ベスト・ソムリエに選ばれ、2013年東京で行われたソムリエ世界大会では4位に輝いた人物です。彼と出会い、共に働く機会を得たことで、ワインの奥深さ、面白さ、そしてお客様と分かち合う喜びに開眼しました。
ワインについて熟知していることはもちろんのこと、一緒に提供されるメニューに使われる食材、調理法などについて細部まで把握し、同時にお客様の好みに寄り添い、ご希望を引き出すことで、それぞれのテーブルで完璧なマリアージュを演出することを目指しています。単に自分の考えを押し付けたり、ワインについてのみ語るのではなく、1回の食事を通して新たな発見や、今までにない体験を楽しんでいただけるよう、レストランで働くチームで一丸となってお客様を導くことが重要と考えています。
オーガニックワインやビオディナミ、ヴァン・ナチュールに関するご質問にお答えする際には、いつも気を遣います。日進月歩で新たな研究結果、情報が常に更新される分野でもありますし、お客様によって信じていること、大切と考える点がそれぞれ異なるからです。私が選んだワインリストの中にも、オーガニックやビオディナミで造られたワインが数多く載っていますが、ビオか否かを選定基準にしているわけではありません。完成度の高いワインが、オーガニックで造られているという場合もありますが、もちろん、そうでないワインの中にも、特出する品質を備えたワインは多数存在します。情報は正確にお伝えしつつ、お客様が何を求めていらっしゃるのか、丁寧に伺い、ご希望を満たすご提案を心がけています。
やはり、ワインを通じてお客様と過ごす特別な時間が、私自身のやりがいに繋がっています。同じお客様でも、全く同じシチュエーションは有り得ない。一期一会の貴重な瞬間に、目の前のお客様と誠実に向き合い、ご満足いただけたと実感した時の喜びは、何にも代えられません。
ワインの世界は非常に広大でありながら、小さな世界でもあります。雑誌、ソーシャルメディア、試飲会、そして特に周囲の人々との共有を通じて、新しい情報や若いワイン生産者について、常に最新の情報を集めています。
グロフィエのシャボール・ミュジニィ・レ・ザムールーズ 2008年です。
もちろん、オーヴェルニュ、私の故郷です。かつてオーヴェルニュにも、200ヘクタールものワイン用ブドウ畑が広がっていた時代がありました。それが、フィロキセラ禍、第一次世界大戦、第二次世界大戦を経て造り手がどんどん減少し、さらにタイヤで有名なミシュラン本社がクレルモン・フェランにできてからは、ブドウ畑を捨てて、サラリーマンに転向する生産者が大勢出ました。結果、ブドウ畑は50ヘクタールまで減ってしまい、フランス人でもこの地のワインを知らない人もいるほどです。しかし近年、若いワイン生産者たちが新たに目覚め、自然を大切にする気持ちを持ちながら、多くの情熱をこの地のワインに注ぎ始めました。これからますますオーヴェルニュのワインの品質は向上し、いつか世界にも広く知られることになると信じています。
いいえ、残念ながら、日本のワインを味わったことはありません。が、ちょうど友人から、日本産ワインのサンプルがオーヴェルニュのに届いたと聞いていますので、近日中に是非試してみたいと思っています。私達のレストランにいらっしゃるお客様も、日本からの方は数えるほどです。ですが、日本の方はフランスのワイン造りの技術への深い尊敬があり、そのため私たちのブドウ畑やテロワールについての知識が豊富であり、品質に対する期待も非常に高いと感じています。