フランス北部、大陸性気候の地域に位置するシャンパーニュ。他のワイン産地が春を迎えるこの時期になっても、まだ朝晩はかなり冷え込むこの地域で、生産者たちが一番心配しているのが“Gelées de printemps”(ジュレ・ド・プランタン)、霜の被害です。
長い冬を越え、ようやく春の訪れを予感させる暖かな日差しが照るようになると、気温の低い間眠っていたブドウ樹は目覚め、新しい芽が開いてきます。そこへ気温を氷点下まで下げるような寒波が押し寄せると、出たばかりの芽や枝は伸びかけのまま、それ以上の成長を止めてしまうのです。芽が成長しなければ実はなりません。春に霜の被害にあった畑からは、そのヴィンテージの収穫ができなくなってしまいます。
霜の被害から繊細な新芽を守るために、シャンパーニュ地方では多くの畑で「散水」を行います。霧吹きのようなものを畑の至る所に設置して、霜がつく前に、芽を凍らせてしまうのです。凍結した水は0℃のまま、芽の周りを覆い、守ってくれます。散水のタイミングや量をはかるため、時に生産者たちは夜を徹して畑の見回りを続けます。厳しい自然と戦う、人々の努力があってこそ、あの美しく香り高いシャンパーニュが生まれるのです。