旬のフランス便り

第54回目 Les Congés d'Été des Boulangeries!パン屋もバカンス

パン

日本人にとってのお米と同じくらい、フランス人の食卓に欠かせないパン。

お米との最大の違いは、自宅で調理するのではなく、都度行きつけのBoulangerieブーランジェリー(パン屋)へ行って、焼き立てのパンを調達するということが生活の一部になっているという点ではないでしょうか。夏のバカンス時期は、そんなフランス人たちにとって試練(?)の時。労働者の国フランスですから、Boulangerieブーランジェリーだって1ヵ月ものLes Congés d'Étéレ・コンジェ・デテ=バカンスを取るのは普通のことなのです!

事前にチェックを怠らなかったしっかり者の常連客たちは、"ここは●日から休みに入るから、それまでに冷凍庫にストックする分を買っておいて、残りの日は少し離れた別のBoulangerieブーランジェリーまで買いに行かなくちゃ"と、きちんとプランを立てているものですが、もちろん皆がそのように用意周到なわけではないので、突然長期休暇に入ってしまったBoulangerieブーランジェリーの前で愕然と立ち尽くしている人を見かけるのも日常茶飯事。

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夕食前のタイミングには同じ店に何人もの買い物客が集まることも多く、"確かあそこは開いているはず!"と一緒に別の店を探しに行ったり、目当ての店がどこも閉まっていて右往左往しているうちに、最初の店で会ったお客様と出くわして、"まだ見つからないのね"とお互い苦笑を交わしたり。このような光景が、夏の風物詩になっています。

すべてのフランス人に当然の権利として受け入れられているバカンスの習慣ですが、お気に入りのパンが手に入らなかったときのガッカリ感は否めません。最近ではかなりレベルの高い冷凍パンも気軽に手に入るようになりましたし、他のお店の味を試す良いチャンスでもありますが、やっぱり食べ慣れたあのパンがないと...と嘆いている人の割合が圧倒的に多いと思います。夏の終わり、ようやく戻ってきてくれたパン屋さんとバカンスの思い出を語り合いながら、さっそくその場でちぎって口に入れるいつものパンの味わいは、普段よりずっと美味しく感じられるのです。

Baguetteバゲット / Baguette Traditionバゲット・トラディション

バゲット

フランスと言えば、この長いフランスパン!フランス語では「杖」や「棒」の意味を持つBaguetteという名で呼ばれています。世界的にも有名で、日本でも馴染み深いパンですが、本場フランスのBoulangerieブーランジェリーBaguetteバゲットと言うと、通常のBaguetteバゲットBaguette Traditionバゲット・トラディションの2種類があります。Traditionトラディションはその名の通り、伝統製法に則って作られたBaguetteバゲットのことで、原料に使用が認められている材料(基本的に必要な材料以外の添加物は一切不可)、製法(製造過程で冷凍してはいけない等)の点で細かく規定がされています。そのため、1本あたりの値段もただのBaguetteバゲットに比べるとやや高めに設定されていることがほとんど。ですが、同じ原料・同じ製造方法のルールに縛られた中だからこそ、各Boulangerieブーランジェリーの腕の見せどころとも言えます。異なる店舗の食べ比べを楽しむ際は、是非Traditionトラディションにこだわって選んでみてください!

Chouquetteシューケット

シュー

CroissantクロワッサンPain au Chocolatパン・オ・ショコラ(チョコレート入りクロワッサン)、Chaussonaux Pommesジョソン・オ・ポム(りんごパイ)などの有名どころは、日本でも良いパン屋さんならかなりレベルの高いものが味わえますが、なかなか日本で食べられないのがこのChouquetteシューケット。一口サイズの小さなシュー生地にパールシュガーをまぶして焼き上げた小さなパンで、フランス人にとっては馴染み深いおやつです。通常は中にクリームなどは入っていないので、甘いものが苦手な方にもおすすめです。ほしい個数を指定して注文することもできますが、たいてい袋単位で売られています。1袋食べきれるかと心配になるかもしれませんが、さっくりと香ばしいシュー生地が口のなかでふわりとほどけて、パールシュガーのカリカリとした食感がアクセントとなり、素朴ながらも、もうひとつ、もうひとつ、と手が止まらなくなる味。翌日にはこの楽しい食感は失われてしまいますので、購入されたら是非、その日のうちに食べきってください。

Flancフラン

フラン

パン以外にも心惹かれるパティスリーがずらりと並ぶBoulangerieブーランジェリーですが、是非一度は本場フランスでお試しいただきたいのがFlanc。どこのBoulangerieブーランジェリーにもひとつは置いている、こちらも本場フランスでは定番のパティスリーで、カスタードタルトのようなお菓子です。他の色とりどりのケーキに比べると素朴な見た目で、値段も安いのであまり目立ちませんが、たっぷりと使われた新鮮な卵の旨味を存分に感じられる、農業大国フランスの自然の豊かさがギュッと詰まったかのようなこのケーキには、フランスのBoulangerieブーランジェリーでしか出せない美味しさがあります。意外と甘さ控えめなふわふわカスタードと薄く敷かれたパイ生地、香ばしく焼き目をつけた表面のバランスが絶妙で、この魅力に取り憑かれると、新しいBoulangerieブーランジェリーを訪れる度に買い求めるようになってしまいます。