第8回
Barrique ="樽"の魔法
ワインの味を決める"木樽"の世界
ワインづくりに欠かせない「樽」という存在
赤ワインも白ワインも、使用する樽会社、樽の焼き具合、樽の木材、樽の原料になる木の樹齢によって全く異なる味わいを生み出します。
よく樽を使うことを最後の「お化粧」に例えることが多いのですが、スッピンが美人なのに、お化粧しすぎるとせっかくの美人さんが台無し…ということもありますし、お化粧によって驚くほど美しく変身を遂げる、ということもあるのです。お化粧が顔の印象を変えるように、樽の使い方で最終仕上がるワインのスタイルに大きな影響を与えるのです。
木材の産地による違い
樽に使う木材には、生育地の環境により同じ年数を経た樹でも、より年輪の多いものなど、様々な違いが生まれます。そのほかにも、乾燥の仕方や成型の方法などによっても微妙な違いが生まれ、非常に奥の深い世界です。
フランスで有名なオーク樽の名産地といえば、トロンセ、アリエ、ヴォージュ、プラフォールなど。それぞれ異なる個性があり、生産者はワインのスタイルに合わせて樽を選びます。
樽内部の“焼き”が生み出す味の違い
樽の内部をどの程度焼き上げるか(=トーストレベル)は、ワインから立ち上る香り、アタック、味わい、骨格、余韻・・・ひいては全体の印象を左右する重要な要素です。
- ライトトースト:バニラ香
- ミディアムトースト:バニラ、スパイス、果実感
- ヘビートースト:コーヒーやカカオのニュアンス
焼き加減の違いが、ワインに個性を与え、香りや味わいの深みを決定づけます。
フランスには「樽の神様」と称される職人が存在し、伝統の技とレシピにより樽は造られています。
アンリ・ジャイエ自ら樽を焼いた逸話など、焼き工程の重要性を示す故事も多く語られています。
ボルドー格付けシャトーでは、以下の4社が樽工房を有する稀有な存在。
- シャトー・マルゴー
- シャトー・ラフィット・ロートシルト
- シャトー・オー・ブリオン
- シャトー・スミス・オー・ラフィット
自分達の目指す味わいを実現するため、熟練の樽職人を自社のスタッフとして訓練し、材木の産地から焼き方まで徹底的にこだわりぬいているのです。
特別な樽材 ― ヘーゼルナッツ、アカシア、UMAMI樽
通常、フランス産ワインの熟成に使われる木樽はオークの樹から作られますが、従来の方法にとらわれず、新しい方法にチャレンジする生産者も増えてきています。
近年注目されているのが、ヘーゼルナッツやアカシアの木を使った樽。
独自の香りとまろやかさをワインにもたらし、個性的な仕上がりを生み出します。
また、日本独自の発想から生まれた「UMAMI樽」も登場。
日本語でもしっかりと「うま味」と焼き印が押されているので、日本産!?と、思いきや、フランスの会社が製造しています。
ワインに“うま味”のニュアンスを引き出す設計が施されているのだとか。
日本食ブームの影響で広がった“うま味”のコンセプトが、こんなところにも届いているのですね。
樽に代わるか!?古代から続く保存容器「アンフォラ」も人気
陶器製の発酵容器「アンフォラ」は、紀元前から使用されてきた伝統的な道具。
ワインに穏やかな酸化を与え、滑らかで丸みのある味わいをもたらします。
アンフォラはサイズもさまざまで、一般的な樽(225L~228L)より大きい360L~1,200Lが主流。
テラコッタよりも堅牢な素材を用いることで、健全でクリアなワインが生まれると言われており、近年ますますワイン造りに取り入れる生産者が増えてきているようです。
「造りの違い」を楽しむ贅沢
樽材、焼き加減、発酵容器。
ワイン造りの選択肢は多岐にわたり、その違いがワインの個性を形づくります。
テロワールの違い、ブドウ品種の違いだけでなく、ワインの熟成過程にも目を向けてみると、ワインがより立体的で奥深く感じられるはずです。