第4回

ワインのプロ直伝!
ワイングラスのスマートな持ち方

ワインを楽しむ際、スマートなグラスの持ち方はエレガントな印象を与えるだけでなく、ワイン本来の味わいを引き出す重要な要素です。本記事では、ワインのプロ直伝のワイングラスの正しい持ち方やマナーについて、以下のキーワードを網羅しながら解説します。

ワイングラスの基本構造と各部位の名称

まず、ワイングラスの各部位の名称を理解することが大切です。以下に主要な部分を示します。

・ リム(縁):グラスの飲み口部分。
・ ボウル:ワインが注がれる膨らんだ部分。香りを閉じ込める役割があります。
・ ステム:ボウルと底(フット)をつなぐ細い脚の部分。
・ フット(プレート):テーブルに接し、グラスを支える土台となる部分。
これらの部位を把握することで、持ち方やマナーをより深く理解できます。

正しいワイングラスの持ち方

一般的に、ワイングラスはステムを持つことが推奨されています。ステムを持つことで、手の温度がワインに伝わるのを防ぎ、適切な温度を維持できます。ワインには、ワイン自体の持つ香りや味わいが最大限に発揮される温度があります。特にレストランなどでワインを楽しむ場合に、ワインが最適な温度で提供されることも多く、その適温を保つためにはステムを持つことが合理的なのです。

最初はグラスがぐらつく不安もあるかもしれませんが、その場合はステムの上部、よりボウルに近い部分を持つことで安定感が増します。

この持ち方が推奨される理由は大きく3つあります。
1. 温度の維持
 手の温度がボウルに伝わらないことで、ワインの適切な温度を保てます。白ワインやスパークリングワインを楽しむ際には特に重要です。

2. 見た目のスマートさ
 ステムを持つことで指紋がボウルにつかず、見た目が美しく上品な印象になります。

3. テイスティング時の所作
 グラスを揺らす「スワリング」がしやすく、香りを楽しむための準備が整います。

このような理由から、ソムリエや店員、そしてワイン愛好家たちは基本、ステムを持つスタイルを基本としています。

正しい持ち方:
ステムを指3本でつまむ。グラスの他の部分に指紋が付かず、ワインの液温も適切に保たれる。
NGな持ち方:
ボウルを握る。ボウルに指紋がついてしまい、ワインの液温も上がってしまう。

スパークリングワイン用グラスの持ち方も同じ?

シャンパーニュやスパークリングワインに使うフルート型グラスや、より香りを楽しめるようにボウルがより大きいクープ型グラスも基本的にはステムを持つことが正解です。これらのワインは特に冷やして提供されるため、手の熱を避けることが重要となります。

また、シャンパーニュやスパークリングワインは視覚的にも楽しむお酒です。グラスも、立ち上る気泡を美しく見せるように設計されていると言われます。立ち上る気泡でエレガントな気分に浸るためにも、指紋や曇りをつけないようステムを持つことが推奨されます。

例外的に「ボウルを持つ」べきケース

1. 赤ワインが冷えすぎている場合
赤ワインは通常、室温(おおよそ15〜18℃前後)で提供されるのが理想ですが、場合によっては、冷蔵庫並みに冷えた状態で出てくることもあります。
ワインの液温が低いと、ワインの香りが閉じてしまい、本来の風味が十分に楽しめないことがあります。
ワインが冷えすぎていて、あまり香りや味わいが楽しめないなと感じた場合、解決策として、自分の手の温度でグラスのボウルを軽く包み込むようにして温めることで、ワインが理想的な温度に近づき、香りが立ち始めます。

2. 白ワインが冷えすぎている場合
一般的に白ワインは冷やして楽しむものと思われがちです。確かに赤ワインよりは適温が低いものが多いですが、冷えすぎていると香りが立ちにくく、味わいも閉じてしまいます。特に、本来であれば熟した洋梨、トロピカルフルーツ、白桃などの香りが出るブドウ品種(ローヌ地方の白ワインやニューワールドのシャルドネなど)を味わう場合、もしくはブルゴーニュ地方のムルソーやピュリニー・モンラッシェなど、木樽熟成から来る複雑なアロマを備えた白ワインは、少し温度が上がることで真価を発揮します。

3. 屋外での立食パーティーなど不安定な場所の場合
着席の状態でじっくりとワインを味わうというわけではなく、屋外での立食パーティーのように、歩き回ったり、グラスと共にお皿も持つといった動作を行いながらグラスを持つ場合、ワインがこぼれてしまっては大惨事。そのようなシチュエーションでは、より安定するグラスの持ち方を心がけましょう。食事をする際は、一旦グラスを置くことなども有効です。

とくにワインの特性に応じてあえて“例外の持ち方”を選ぶ判断力は、ワイン上級者の証です。香りがふわっと開き、適温に近づいてくるのを感じたら、すぐにステム持ちに戻すのがスマートです。

持ち方の基本と崩した持ち方

ワインと接する機会の多い方で、特にカジュアルな場面では、ワインやグラスの特性などを考えながら少し崩した持ち方をするケースもあるかと思います。また、少しパフォーマンスがかった場面では、美観的によりきれいだけれど、日常的にはやや安定性が劣る持ち方をする場合もあります。
日本の伝統文化に「型崩し」という言葉がありますが、型をあえて崩した様が粋に映るのは「型」をきちんと知っているからこそ。基本をきちんとおさえることで、格式あるレストランでは基本に忠実なスマートな所作を、気のおけない友人とのカジュアルな席では少し崩した所作など、場面場面に上手に適応できるようになります。

ワイン会やレストランでのグラスの取扱い

ここまでは1人の時でも実践したいグラスの持ち方をご説明してきましたが、複数人でのワイン会や、レストランで会食される際のグラスの取扱いには細やかなポイントがあります。これらのポイントは、繊細で透き通ったワイングラスでワインを楽しむためにも大事な要素です。
●フォーマルな乾杯のときは、軽く持ち上げるだけ
グラス同士をぶつけずに、軽く持ち上げて目を合わせるのが基本です。
●注がれるときは持ち上げない
お酌の文化の影響でグラスを持ち上げたり、手を添えたくなりますが、ワイングラスの場合は静かに置いたままが正解です。
●置くときは静かに
テーブルに戻すときも「カチャッ」と音を立てないよう、底を優しく置きましょう。
●ワインの席では、唇のメイクは控えめに
口紅がグラスにべったりと付いてしまわないよう、食事やワイン会の場での唇のメイクは控えめが基本です。軽くティッシュで押さえておくなど、事前の準備を心がけましょう。
うっかり付けてしまった場合には、気づいた時点でそっと自分で拭き取るのが望ましいマナーです。指でこするのではなく、ナプキンやハンカチなどを用い、会話の合間など自然なタイミングで優しくふき取りましょう。

このような気配りができると、グラスの取扱いがわかっている人という印象となり、ワインの場でも一目置かれます。

まとめ

今回はワイングラスの持ち方についていろいろお話ししましたが、一番大切なのは「ワインを介して出会った人との会話を楽しみ、一期一会のワインを心から楽しむ気持ち」。最初は正しい持ち方ができなくとも、気にすることではありません!何度もグラスを持って、ワインと向き合っていくうちに、自然と自分に合った所作が身についていきます。この記事でご説明したことは、ワイングラスを慣れた感じで持ちたいなと思ったときにご参考にしていただけるポイントや、ご一緒する人と心地よく楽しむためのヒントです。あまり堅苦しく考えず、肩の力を抜いて、気軽にワインを楽しんでいきましょう!
この記事の監修者
吉村 充弘
DipWSET(英国のワイントレードの資格)、日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート、ボルドー大学大学院修士(ワイン法)。
フランス・パリを拠点とし、ワイン専門ガイドとしてヨーロッパ各地(特にフランス北部)のワイン産地への旅を支援するほか、パリでのワイン教室 un verre を主宰。フランスワインを中心に、歴史や食文化などを併せて各地方のワインを立体的に紹介する講座などを開催している。キャプランワインアカデミーではWSET対策オンライン講座の講師を務める。
ボルドー大学では、原産地呼称統制(AOC)制度や環境認証など、ワイン法を様々な視点から研究。また、調査で得た地質や歴史の知識に加え、世界各地のワイン産地へ足を運ぶことで、五感を通じたワインの理解を深めている。
ワイン教室 un verre:https://www.instagram.com/unverreparis/