第3回

メルローの特徴や産地、
カベルネ・ソーヴィニョンや
ピノ・ノワールとの違いを解説!

メルローとは?特徴や産地について

ワイン愛好家はもちろん、あまりワインを飲まないという方も、きっと一度は聞いたことがある有名ワイン用ブドウ品種メルロー。その特徴を詳しく解説します。

メルローの特徴は?

「メルロー」は、赤ワイン用のブドウ品種で、世界中で広く栽培されています。その特徴は、比較的柔らかいタンニン(渋み)とフルーティーな風味です。一般的に、メルローは赤系果実や黒系果実、例えばプラムやチェリー、時にはチョコレートやスパイスのような香りが感じられることがあります。味わいは滑らか、ジューシーで、軽やかでありながらもしっかりとしたボディを持ち、飲みやすさが魅力です。
また、メルローは他の品種とブレンドされることも多く、例えば果実味豊かなメルローに酸味やタンニンの骨格のしっかりしたカベルネ・ソーヴィニョンと合わせることで、ワインに深みや複雑さが加わり、バランスのよいワインができ上がります。地方によっては、メルローのみを使ったフルーティーで口当たりのよい赤ワインも造られています。特に初心者には、メルローのまろやかで優しい味わいが飲みやすく、初めて赤ワインを試す方にもおすすめです。

産地は?

フランスの「メルロー」の代表的な産地は、主にボルドー地方です。メルローのふるさとであるボルドー地方では、メルローが比較的温暖な気候と肥沃で保水性の高い土壌でよく育ち、豊かな果実味と丸みのある味わいを生み出します。特にボルドーの右岸に位置する「ポムロール」や「サン・テミリオン」が有名で、メルローを主体とした高品質なワインが生産されています。
また、アメリカのカリフォルニア州もメルローの主要産地の一つです。特にナパ・ヴァレーでは、温暖な気候がメルローの特徴的な柔らかさと果実味を引き出します。ニューヨーク州沿岸部のマイルドな気候の下では、ボルドーに似た比較的フレッシュなスタイルが注目を集めています。さらに、チリやアルゼンチン、ニュージーランドの一部地域でもメルローが栽培されており、これらの地域でも品質の高いメルローが生産されています。各地で栽培されるメルローは、それぞれの産地に特有の風味を反映したワインが造られており、様々なスタイルのワインを見つけ、楽しむことができます。

メルローの歴史を知ろう!

メルローの歴史は古く、18世紀にまで遡ると言われています。名前の由来はフランス語で「小さな黒鳥」を意味する「merle」から来ており、その理由についてはメルローの果実の色が黒鳥に似ていたという説や鳥が好むほど甘い果実を持つことから名付けられたという説など、諸説があります。ボルドー地方原産のブドウ品種で、現在も同じくボルドーで栽培されているカベルネ・フランが父親、カベルネ・ソーヴィニョンは兄弟にあたります。現在も、いわば家族であるカベルネ・ソーヴィニョンやカベルネ・フランとブレンドされることが多いのは、興味深いですね。
メルローは、カベルネ・ソーヴィニョンより冷涼な気候でもしっかり熟するため、特にボルドー右岸のポムロールやサン・テミリオンなど、粘土質主体で地面の温度が上がりづらく、カベルネ・ソーヴィニョンを完熟させることが難しい地域で花開きます。また、礫質(砂利)が主体で、カベルネ・ソーヴィニョンも完熟可能なボルドー左岸(メドックなど)でも、メルローは、ブレンドでカベルネ・ソーヴィニョンと補完し合うだけでなく、冷涼な収穫年でも完熟し、収穫量を安定させる存在として頼りにされています。
ヨーロッパ各国の世界進出が進んだ19世紀以降、他の欧州品種のブドウとともに、メルローも世界中に持ち込まれました。カリフォルニアやチリ、オーストラリアなど、世界中のワイン産地でも盛んに栽培されるようになり、特に1980年代以降、アメリカでの人気も背景に世界中で愛されるワインの1つとなりました。現在では、世界で最も広く栽培されている赤ワイン用ブドウ品種の1つです。

メルローの一般的な醸造法

ボルドー地方では、果実が酸味を残しつつも十分に甘みと風味を蓄える通常9月下旬から10月初旬に収穫され、醸造が開始されます。より温暖な気候の産地では、早い時期に収穫されることも多い品種です。
他の赤ワイン用ブドウと同様、収穫後は果実を破砕して果汁を取り出し、発酵が始まります。発酵は温度管理をしながら行い、通常は25~30度の温度で進めることで、果実味と色素をしっかりと抽出します。また、メルローを使ったワインは、発酵後に「マロラクティック発酵」を行うことが多く、これによって酸味がまろやかになり、より丸みを帯びた味わいになります。
熟成は、フレンチオークやアメリカンオークの樽で行われることが多く、これによりバニラやスパイスの風味が加わります。熟成期間はワインのスタイルによりますが、通常は数ヶ月から1年半程度でワインが完成します。

メルローと他のブドウ品種との違い(赤ワイン用)

赤ワイン用ブドウ品種には、メルロー以外にもさまざまな種類が存在します。代表的な品種、カベルネ・ソーヴィニヨンとピノ・ノワールと比較することで、その特長がよりわかりやすくなります。
●カベルネ・ソーヴィニョンとの違い
メルローとカベルネ・ソーヴィニヨンは、どちらも人気のある赤ワイン用ブドウ品種ですが、いくつかの重要な違いがあります。

1. 味わいの違い
メルローは柔らかく、まろやかな口当たりが特徴で、フルーティーで優しい風味が楽しめます。特にプラムやチェリーのような果実味が強く、タンニン(渋み)も強くなくワインに溶け込むような一体感があるため、飲みやすいです。一方、カベルネ・ソーヴィニヨンは、メルローより高くしなやかな酸味を持ち、より存在感のある乾いたタンニンがある、骨格のあるワインです。ブラックベリーやカシスのような黒系果実中心の力強い果実感に加え、スパイシーで複雑な香りがあります。
2. 栽培の特徴における違い
メルローは、カベルネ・ソーヴィニョンと比べて、発芽から成熟までのすべてのステップが比較的早く、収穫もカベルネ・ソーヴィニョンより前に行われることが多いです。メルローは、水分を好む品種で、水分が多く地面の温度が上がりづらい粘土質の土壌にも適しています。カベルネ・ソーヴィニヨンは、メルローより多くの日射しと熱を必要とし、成熟が遅いため、メルローより後に収穫されることが一般的です。水はけがよい礫質(砂利)の土壌を好み、地面の温度が上がりやすい礫質は多くの熱を必要とするカベルネ・ソーヴィニョンの成熟を助けます。
両者はしばしばブレンドされ、互いの特徴を補完し合うこともあります。
●ピノ・ノワールとの違い
1. 味わいの違い
メルローは、柔らかくてフルーティーなワインを作るブドウです。味わいは、プラムやチェリーなどの果実味が豊かで、ピノ・ノワールと比べるとブラックチェリーなどの黒系果実やハーブ、少しカカオパウダーのような風味も持ち合わせていることが特徴です。酸味やタンニン(渋み)はワインに溶け込んでいるような舌ざわりで、滑らかで飲みやすいのが特徴です。比較的温暖な気候で育ち、ボディがしっかりしているワインが多いです。
一方、ピノ・ノワールは非常にデリケートで、繊細な味わいを持つブドウです。果実味はストロベリーやラズベリーなどの赤系果実が中心で、軽やかでフレッシュな印象が強く、酸味がしっかりと感じられます。タンニン(渋み)の高さはワインにもよりますが、きめ細やかな舌ざわりが特徴的です。
2. 栽培の特徴における違い
ピノ・ノワールは、メルローとほぼ同時に発芽しますが、収穫はメルローより早いことが多いです。したがって、秋の訪れが早い冷涼な地域でも栽培が可能です。メルローと比べ、ピノ・ノワールは果皮がより薄く、そのため、ワインは繊細で軽やかなものが多く、メルローよりも淡い色合いに仕上がることが多いです。しかしながら、この果皮の薄さゆえに、ピノ・ノワールはいろいろな病害に弱く、数あるブドウ品種の中でも栽培が難しい品種として知られています。
メルローは単一品種のワインとして造られることも、他の品種とブレンドされることもありますが、ピノ・ノワールは単一品種のワインとして造られることが多い品種です。総じて、メルローはよりまろやかで飲みやすく、ピノ・ノワールは爽やかな酸味とともに複雑で繊細な風味が楽しめます。
両者はしばしばブレンドされ、互いの特徴を補完し合うこともあります。

メルローのワインと合う料理とは

フルーティーで柔らかな味わいのメルロー。酸味が少なく、口当たりが滑らかなので、幅広い料理に合わせやすいのが特長です。とくに軽めの肉料理や、まろやかなソースを使った料理との相性が良いでしょう。

1. ローストチキン
メルローのまろやかでフルーティーな味わいは、ローストチキンのジューシーで軽い味わいとよく合います。特に、メルローの中に少しハーブのような香りを感じることもあるので、ハーブを使った調理がメルローの風味を引き立てます。
2. ビーフストロガノフ
ビーフストロガノフのクリーミーなソースと、メルローの柔らかなタンニンと果実味が絶妙に調和します。特にマロラクティック発酵を行ったメルローは、サワークリームを使ったソースと相性がよく感じられるでしょう。肉の旨味とソースのコクがワインの豊かな味わいとよくマッチします。
3. マッシュルームのソテー
メルローのフルーティーな風味は、香り高いマッシュルームとの相性が良いです。特にバターやガーリックでソテーしたマッシュルームは、メルローの滑らかな口当たりと調和し、豊かな味わいを楽しめます。ワインの中に少しハーブのような香りがあれば、ローリエなどと一緒にソテーしてみたり、パセリなどをあしらうのもおすすめです。
この記事の監修者
吉村 充弘
DipWSET(英国のワイントレードの資格)、日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート、ボルドー大学大学院修士(ワイン法)。
フランス・パリを拠点とし、ワイン専門ガイドとしてヨーロッパ各地(特にフランス北部)のワイン産地への旅を支援するほか、パリでのワイン教室 un verre を主宰。フランスワインを中心に、歴史や食文化などを併せて各地方のワインを立体的に紹介する講座などを開催している。キャプランワインアカデミーではWSET対策オンライン講座の講師を務める。
ボルドー大学では、原産地呼称統制(AOC)制度や環境認証など、ワイン法を様々な視点から研究。また、調査で得た地質や歴史の知識に加え、世界各地のワイン産地へ足を運ぶことで、五感を通じたワインの理解を深めている。
ワイン教室 un verre:https://www.instagram.com/unverreparis/